今回は「フロントキャリパーはピストン交換してO/Hする」についての記事です。
フロントキャリパーのオーバーホールは、オーバーホールキットを使用してパッキン、シールを新品に交換する作業で、比較的簡単な作業です。
ですが、もし部品に摩耗がある場合には、新品に交換したり磨いて修正する必要があります。しかも、ダストブーツのハメこみにはコツがいるので慣れていないと面倒かもしれません。
と言うことで、今回の記事ではキャリパーオーバーホールのポイントをまとめておこうと思います。
記事の目次
フロントキャリパーはピストン交換してO/Hする
ピストンを抜く
フロントキャリパーのピストンは簡単に抜くことができません。
ピストンを抜く方法
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エアーで押し出す
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特殊工具のプライヤーで引き抜く
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ブレーキフルードの接続口から工具を入れて押し出す
ピストンをエアーで引き抜く
エアーで押し出す方法は、ブレーキフルードの接続口にエアーガンを突っ込んでエアーの力で押し出す方法です。簡単ですが、ピストンが飛び出すので危険が伴います。作業ポイントとしては「盤木」を入れてピストンが飛び出したときの衝撃を緩和することです。この方法の弱点は、ピストンが複数あるキャリパーの場合は、1個目のピストンを抜いた後の2個目のピストンはエアーが漏れてしまうので抜くことができないことです。
特殊工具とは「ピストンリムーバー」や「ブレーキキャリパーピストンプライヤー」と呼ばれる商品のことで、ピストンを工具で掴んで「グリグリ」と回して引き抜く方法です。ピストンが固着している場合やピストンが複数ある場合に有効になります。
ブレーキフルードの接続口から工具を入れて押し出すは、かなり荒っぽい方法になります。シリンダー、ピストンに傷が付く可能性や、ピストンが抜けてくるときに傾いてカジッてしまうことがあります。極力避けたい方法ですね。
特殊工具の紹介をしておきます。下記の商品はピストンの内径を掴んで引き抜く工具です。
*ピストンリムーバーの購入はこちら
*ブレーキキャリパーピストンプライヤーの購入はこちら
洗浄して摩耗具合を確認する
キャリパーはブレーキダストで汚れているので、しっかり洗浄して摩耗具合を確認します。
洗浄と摩耗確認
しっかり洗浄します
ピストンとシリンダーの摩耗を確認します
スライドピンの洗浄前の状態
ピストン、キャリパー、スライドピンに、錆、傷、摩耗、めっきの剥がれ、がないか確認していきます。
異常があった時のポイント
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ピストンは交換
- スライドピンは交換
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キャリパーはペーパーやホーニング砥石で修正
摩耗具合を確認
ピストンのキャリパーの摩耗
スライドピンの摩耗
ピストンを確認したところ、めっきの剥がれがあり、傷も見受けられましたので、新品に交換しました。ミヤコ自動車製の社外品で2個で3500円くらいでした。高いものではないので、気になったら即交換です。
キャリパーは、錆、傷、摩耗、は見受けられませんでしたので、何もせずに再使用しました。もし、錆などを修正する場合は、#1000~1500番くらいの耐水ペーパーやホーニング砥石を使用して修正することが出来ます。ただし、削りすぎると楕円になったり内径が大きくなりすぎてしまい、フルードの漏れ、ピストンのかじり、が発生しするのでやりすぎには注意です。
スライドピンは当たりが強い部分が摩耗していますが、段が付くほどの摩耗ではなく、組付けたときのガタも問題無かったので再使用しました。
*キャリパーの修正にはホーニング砥石がおすすめです。
シリコングリスを使用して組立てる
洗浄して部品交換、修正、が出来たら、いよいよ組立です。組立にはオーバーホールキットを使用します。オーバーホールキットは各種パッキン、シールがセットになっている商品です。
通常はパッキンのオーバーホールキットの付属グリスを使用して組立てますが、今回はワコーズのシリコングリスを使用しました。ピストンにはワコーズのラバーグリス、スライドピンにはスーパーシリコングリスです。
スライドピンにモリブデングリスを塗布することもあるようですが、モリブデングリスは油分が飛んでカスカスの塊になってしまうのでおすすめしません。
出典:株式会社 和光ケミカル カタログ
シリンダに使用
スライドピンに使用
シリコングリスを塗る作業は簡単ですが、塗布量にポイントがあるので紹介しておきます。
シリコンの塗布ポイント
- スライドピンには適度な量を塗布する
- ピストンとキャリパーには極力薄く塗布する
スライドピンは常に金属の摩擦が発生していて、給油されることがないのでスライドピンの表面が白く覆われる程度の量を塗布します。
ピストンとキャリパーには、極力薄くシリコングリスを塗布します。指を押し付けてコスルようにして塗布すれば薄く塗布できます。多めに塗布すると、シリコングリスが塊になってブリーダーに詰まったり、ピストンの動きが悪くなってしまう可能性があるので注意です。潤滑の役目はブレーキフルードが担うので問題ありません。
シリコングリスを塗布
*ワコーズのラバーグリースの購入はこちら
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キャリパーのダストブーツのはめ込みポイント
キャリパーのダストブーツ(ダストシール)のはめ込みは難易度が高いので解説しておきます。
ダストブーツのはめ込み方法
ダストブーツはキャリパーの溝にハメるのですが結構面倒です。
ダストブーツをハメるポイント
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ピストンにダストブーツをハメておく
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ピストンを押し込む前にダストブーツを溝にハメる
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ピストンを押し込んでブーツが盛り上がっていればハマっていない
ダストブーツはピストンを押し込む前にキャリパーの溝にハメておきます。別の言い方をすると、ダストブーツをキャリパーにのぞませておいて、そこにピストンを押し込むことでダストブーツが溝にハマります。
溝にハマっているか?の確認はピストンを押し込んだ時に、少しでも盛り上りがあれば、その部分はハマっていません。なので、もう一度ピストンを外してやり直しです。逆に、盛り上がりがなければ溝にハマっていることになります。
この点は見落としがちなので、不安だったら何度もやり直してください。
ここまでの作業ができればフロントキャリパーのオーバーホールは完了です。
ポイントまとめ
それでは、フロントキャリパーのO/Hについて重要なポイントをまとめておきます。
ポイント
- ピストンはエアーか特殊工具で取り外す
- ピストンとスライドピンが摩耗したら交換
- キャリパーはペーパーやホーニング砥石で修正
- シリコングリースの塗布量には注意が必要
- ダストブーツは盛り上がっていればハマっていない
以上5つのポイントです。
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関連記事:【日々の作業】
以上です。