錆びたボルトを緩める、外す、のは一苦労です。と言うか、緩めれずになめてしまったり、折れてしまったり、することがありがちなので泣きたくなる作業ですね。
錆びたねじを外す方法には、潤滑スプレーをする、ボルトを切断する、ガストーチで炙る、ナットを破壊する、など色々な方法がありますが、一番安全で簡単に外す方法としてはやっぱり潤滑スプレーです。ただ、潤滑スプレーにはもの凄く種類があり、全部をそろえるなんて不可能です。
と言うことで、3年間錆びさせたボルトと5つの潤滑スプレーを用意したので、どれが一番効果的なのか検証することにしました。
記事の目次
錆びたボルトを緩めて外す5つの方法
結論!錆びたボルトを外す方法
結論から言います。
今回の検証結果から分かったことは、錆びたボルトを緩める瞬間に有効なのは「凍結&潤滑系」のスプレーで、緩んだ後にナットを回転させて外すときは「フッ素系の潤滑剤」が有効です。
錆びたボルトを緩める方法
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緩める瞬間は「凍結&潤滑」が最適
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ナット回転させて外すときは「フッ素系の潤滑剤」が最適
凍結&潤滑とは「凍結浸透ルブ」や「ラストブリザード」のことで、フッ素系の潤滑剤とは「ラスペネ」や「NR-11」のことです。
錆びたねじを外す
今回の検証では5つの潤滑剤を使用して錆びたボルトを緩めてみたのですが、全ての潤滑剤でボルトを緩めて取外すことが出来ました。
ただ、潤滑剤の違いによって緩まり方に差があり、潤滑剤を使い分けた方が最適な事が分かりました。詳しくはクリック⇒「検証結果まとめ」
5つのスプレーで検証してみた
錆びたボルトを緩めるために、一体何が有効なのか?
と言うことで、5つのスプレーを用意して検証してみました。
5つの潤滑剤
スプレーは大きく分けて「定番の潤滑剤」「フッ素配合の潤滑剤」「凍結&潤滑の潤滑剤」の3種類です。
定番の潤滑剤
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5-56・・・簡易潤滑剤の定番。多用途・多機能防錆・潤滑剤です。
フッ素配合の潤滑剤
- ラスペネ・・・強力な浸透力と防錆性を有するフッ素化合物配合の浸透潤滑剤
- NR-11 ハイパーショットルブ緩め・・・フッ素配合のボルトの緩めに特化した浸透防錆潤滑剤
凍結&潤滑の潤滑剤
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凍結浸透ルブ・・・-33℃で凍結収縮してサビを割りハイスピード浸透潤滑剤で緩める
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ラストブリザード・・・-42℃の冷却剤で瞬間収縮させてすき間を作りオイルを浸透させて緩める
この中でも、今回の検証を行うまで「凍結&潤滑」のスプレーを知りませんでした、最近はボルトを冷却して潤滑剤を浸透させる方法が流行りみたいですね。ボルトを炙って熱膨張させてすき間を作る方法に似ています。
検証するために錆びたボルトを用意
検証にあたって錆びたボルトは10本用意しました。
検証用のボルトについて
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強度区分12.9のM10ボルトを使用
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115N・mで締め付けて錆びさせる
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約3年間サンポールや食塩水につけて錆びさせた
3年間錆びさせたボルト
そうなんです、検証するために3年前から仕込んでいたんです。凄いでしょ(笑)
で、ボルトは強度が低いと緩めるときに折れてしまうことが考えられたので、ハイテンションボルトの強度区分12.9のボルトにしました。そのボルトとナットをKTCのデジタルトルクレンチで115N・mで締め付けて錆びさせてあります。
検証結果をまとめてみた
検証には公平性を確保するために、一律の条件を設けました。
検証の条件はこちら
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塗布後2分放置してから緩める
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潤滑剤は垂れるまで吹きかける
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凍結&潤滑タイプは15秒間塗布し続ける
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緩んだら様子を見ながら塗布してナットを外す
こんな感じの条件です。「凍結&潤滑タイプ」に限ってボルトを冷却して凍らせるために15秒の連続塗布した後に2分間放置としました。これは取扱説明書に書かれています。それ以外のスプレーは潤滑剤をたっぷりと垂れるまで吹きかけて2分放置としました。
緩んだらボルトからナットを外すのですが、途中で回転しづらくなったり回転しなくなったりするので、様子を見ながらスプレーしつつナットを外しました。
今回の検証、、、、本当は「緩める時のトルク」を測定しようと思っていたのですが、自分が持っているトルクレンチでは測定不能だったので測定できませんでした。
ボルトは錆びさせるまえに115N・mで締め付けているのですが、自前のKTCのトルクレンチ(デジラチェの135N・m)で緩めようとしたら130N・mまでトルクをかけてもビクともしなかったのです。で結局、ラチェットを使用するのもギアが心配なので、1/2のハンドルにインパクト用のソケットを使用して緩めることにしたんですよね。
バイスに固定する
それでは結果発表です
注意
- 「ナットの取外し時間」は手作業での時間なのでバラつきあります。
- 「緩む瞬間のトルク」「ナット回転のスムーズさ」は感覚での評価です。
塗布なしは論外でめちゃ大変でした。5-56は塗布なしよりも全然マシでしたが、その他のスプレーに比べると力不足が否めません。
ボルトを緩めてナットを外すまでの時間だけで判断すると「凍結浸透ルブ」と「ラストブリザード」の凍結&潤滑剤が優秀でした、そして緩む瞬間のトルクもフッ素系のスプレーよりも軽く緩みました。ただ、緩んだ後にナットを回転させる時はフッ素配合の「ラスペネ」や「NR-11」の方がスムーズに感じました。
と言うことで、総合的に判断すると、冒頭でも言っているように、【緩める瞬間は「凍結&潤滑剤」が最適】【ナット回転させて外すときは「フッ素系の潤滑剤」が最適】と判断しました。
と、ここでポイントです。
「凍結&潤滑剤」は必ず15秒以上塗布してください。ボルトを凍らせるために連続してスプレーさせる必要があります。しっかり塗布出来ればボルトが真っ白なって凍結しますが、塗布不足だと5-56と同等程度の能力しか発揮できません。この点は押さえておきましょう。
5つのスプレーを詳しく紹介
今回使用した5つのスプレーを紹介しておきます。
5-56(KURE)
KUREの5-56と言えば、簡易潤滑剤の超定番です。
ホームセンターに必ず売っている、安くて防錆効果があり潤滑効果もあり汎用性があります。一本は必ず持っておきたいスプレーですね。
5-56
ボルトを緩める効果はめちゃ効果的ってわけではないので、錆びたボルトやかじったボルトを必ず外せる保証はありません。そこそこの潤滑剤だと思ってください。
その他にも、ゴム系(パッキン、ガスケット)に塗布すると劣化してひび割れることがあるので、ゴム系には塗布しないようにしましょう。
とは言え、コスパが良い潤滑剤に違いないので一本は持っておきましょう。
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ラスペネ
車やバイクが好きなら必ず持っていると言っても過言ではないワコーズのラスペネ。フッ素配合で粘度がある潤滑剤で、5-56のようにサラサラしていなくて、ねっとりしています。難点としては価格が2000円以上するので非常に高価でドバドバ使うのは躊躇してしまうことです。
用途としては、ボルトの緩めだけじゃなくドリルの穴あけ、錆止め、スライド部分の潤滑にも使用可能なので非常に汎用性が高いスプレーなので、車やバイクをいじるなら必要不可欠でしょう。ワコーズ製品なので信頼性も高いですね。
ラスペネ
引用:ワコーズ ラスペネ
- 浸透性
ボルト・ナットが錆で固着したり、硬くて緩まないなどの場合には、通常の潤滑剤では奥までなかなか行き渡らないため、ボルトを緩めることが出来ません。そこで微小な隙間にも確実に到達するための浸透性が求められます。- 潤滑性
潤滑剤は蝶番・ケーブル・ワイヤー・ドアヒンジ・ネジ等多岐に使用されますが、潤滑性が不十分であれば、即トラブルに繋がります。使用箇所の作動をスムーズに維持するには、耐荷重性・耐摩耗性・低摩擦係数に優れた潤滑剤を使用することが要求されます。- 防錆性
製造時に精度良く組み立てられた部品でも、少量の水分ですぐに錆が発生してきます。もし錆が可動部分で発生したら、スムーズな作動は望めません。そこで、長期にわたり錆を防ぎ、スムーズな作動を維持する防錆性が要求されます。- 水置換性
必要な箇所に直ちに塗布できるのがスプレー式潤滑剤の最大のメリットです。しかし、塗布したい部分が湿っていたり、濡れていたりする場合もあります。このような場合、濡れた箇所に噴霧するだけで直ちに水と置き換わる水置換性という性質があると、即座に浸透・潤滑・防錆効果が発揮できます。
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NR-11 ハイパーショットルブ緩め
NR-11 ハイパーショットルブ緩めは、ラスペネと同じようにフッ素が配合されている潤滑剤ですが、こちらの商品はボルトの緩めに特化した商品のようです。金額はラスペネの約半額なので好印象ですね。
この商品はYouTubeを見ている時に有名チューニングショップさんが「錆びたボルトにはコレ!」と言っていました。結果、今回の検証ではラスペネと大差ない結果でしたが、もしかしたらラスペネでは緩まないボルトに効くかもしれませんね。
引用: 株式会社ダイゾー ニチモリ事業部 NR-11 ハイパーショットルブ緩め
浸透防錆潤滑剤です。泡状の液が棒状にストレートに噴射するので、液の滞留がよく、浸透を促進します。噴射剤にCO2を採用し、液容量(ガス除く正味量)の大幅アップを実現しました。
NR-11
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凍結浸透ルブ(KURE)
KUREから販売されている凍結&潤滑剤の凍結浸透ルブです。KURE製品なので安くてホームセンターで入手可能です。
-33℃で凍結収縮してサビを割り潤滑剤を浸透させるスプレーで、錆びたボルトを外すための専用スプレーです。注意ポイントは15秒以上塗布し続けることです、しっかり凍結させて使用しましょう。
凍結浸透ルブ
凍結すると白くなります
出典:KURE 凍結浸透ルブ
- 凍結収縮してサビを割るフリーズ&クラックアクションとハイスピード浸透潤滑剤のダブル効果により、サビで固着したネジやボルト・ナットをなめずに簡単に取り外すことができます。
- 水置換性にすぐれ、水で濡れた箇所にも効果を発揮します。
- サビで固着した錠前やヒンジにも使用できます。
- アルミ・ステンレスなど鉄以外の金属にも使用できます。
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ラストブリザード
KUREの凍結浸透ルブと同様に、ラストブリザードも錆びたボルトを凍結させる潤滑剤です。違いは凍結浸透ルブは-33℃でしたが、ラストブリザードは-43℃まで冷却します。
冷却温度の違いからなのか、検証結果からも分かるようにラストブリザードは緩む瞬間のトルクが一番小さかったです。なので、凍結浸透ルブよりも数百円高いですがおすすめのスプレーです。
ラストブリザード
15秒塗布すると真っ白に冷却されます
出典:東洋化学紹介 ラストブリザード
ラストブリザードは-42℃の冷却剤が錆びたボルト・ナットを瞬間収縮させると同時に高性能浸透オイルがミクロの隙間に流れ込んでボルト・ナットを緩めやすくします。
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ポイントのまとめ
それでは、錆びたボルトを緩めて外す5つの方法について重要なポイントをまとめておきます。
ポイント
- 緩める瞬間は「凍結&潤滑剤」が最適でナット回転させる時は「フッ素系の潤滑剤」が最適
- ラストブリザードは緩む瞬間のトルクが一番低かった
- ナットを回転させるときはフッ素配合のラスペネやNR-11が最適
- 「凍結&潤滑剤」は15秒塗布し続けて冷却すること
以上4つのポイントが大切です。
関連記事:【締結要素】
以上です。